BIOSからUEFIへ
PC起動システム30年の進化

電源を入れてからWindowsが始まるまで、PCは何をしているのでしょうか。BIOS、UEFI、GPT、Secure Boot、TPMの関係を歴史とともに解きほぐします。

最初に結論:BIOSとUEFIは、OSより先にハードウェアを初期化して起動先へ処理を渡すファームウェアです。UEFIは大容量ディスク、拡張性、安全な起動に対応した現在の標準。今も「BIOS画面」と呼ばれる設定画面の多くは、実際にはUEFIです。

1分で分かるBIOSとUEFIの違い

BIOS

IBM PC時代から続いた従来方式。初期化後、ディスク先頭付近の起動コードへ処理を渡します。

UEFI

現在の標準仕様。専用パーティション上の起動ファイル、GPT、Secure Bootなどを利用できます。

MBRとGPT

ディスクの区切り方を記録する方式。BIOS/UEFIとは別概念ですが、旧環境ではBIOS+MBR、現在はUEFI+GPTが一般的です。

Mac

Intel MacはEFI/UEFI系。Apple Silicon MacはBoot ROM、LLB、iBootを使うApple独自の信頼の連鎖で起動します。

Windowsより先に動くプログラム

電源ON
CPU開始
機器を初期化
起動先を選択
OSへ引き継ぐ

BIOSはBasic Input/Output Systemの略です。IBM PCが登場した1981年から、PC互換機の起動を長く支えました。マザーボード上の不揮発性メモリに保存され、電源投入時に実行されます。

起動直後にはPOST(Power-On Self-Test)などでメモリや主要機器を確認します。画面を表示できない故障時に鳴るビープ音も、ファームウェアが異常を知らせる方法の一つです。ただし検査内容や音の意味はメーカーごとに異なります。

LEGACY BIOS

BIOS時代に見えてきた限界

初期のPCに適していた仕組みも、64bit CPU、大容量ストレージ、多数の周辺機器が普及すると拡張しにくくなりました。

16bitリアルモードから開始

伝統的なPC BIOSは起動時に互換性重視の環境から動き、現代的なファームウェア設計には制約がありました。

MBRの約2TiB問題

512バイト論理セクターと32bitのセクター番号を使う一般的なMBRでは、約2TiBが上限になります。

基本パーティションは4個

標準的なMBRでは4つまで。拡張パーティションで増やせますが、管理が複雑になります。

拡張方法が統一されにくい

ネットワークや新しい起動デバイスなどを扱うため、より標準化されたドライバー・サービス体系が求められました。

正確には:「BIOSだから2TBまで」ではなく、主因はMBRです。BIOSでもGPTをデータ用ディスクとして使える場合があり、UEFIでも設定やOS構成次第ではMBRを扱えます。ただしWindowsの一般的なシステム起動では、Legacy BIOS+MBR、UEFI+GPTという組み合わせが基本です。
UEFI

UEFIは何を変えたのか

IntelがEFIを開発し、その後UEFI Forumが仕様を管理するUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)へ発展しました。UEFIはファームウェアとOSの間の標準インターフェースです。「小さなOS」のように見える場合がありますが、WindowsやmacOSの代用品ではありません。

  • 起動用ファイルをEFI System Partition(ESP)から読み込める
  • GPTによる大容量ディスクと多数のパーティションへ対応
  • ファームウェア用ドライバーやアプリを拡張できる
  • Secure Bootで起動前コードの署名を検証できる
  • メーカー実装によりGUI、マウス、ネットワーク更新などを提供できる

MBRからGPTへ

比較項目MBRGPT
正式名称Master Boot RecordGUID Partition Table
一般的な容量上限約2TiB(512バイト論理セクター時)64bit LBA。現行ストレージでは事実上非常に大きい
パーティション基本4個。拡張領域で追加Windowsでは通常最大128個
管理情報ディスク先頭に集中先頭と末尾にヘッダーを持ち、CRCで破損検出
一般的な起動方式Legacy BIOSUEFI

GPTの理論上限は論理ブロックサイズなどで変わるため、単純に「必ず9.4ZB」と覚える必要はありません。初心者にとって重要なのは、2TBを超える起動ディスクや現在のWindowsではUEFI+GPTが基本という点です。

Secure BootとTPM 2.0

Secure Boot:起動するコードを確認

Secure BootはUEFIに保存された信頼情報を使い、OSより前に動くブートローダーや一部のファームウェアコードのデジタル署名を検証します。許可されていないコードが早期起動へ入り込むリスクを下げます。

TPM:鍵を守り、起動状態を記録

TPMは暗号鍵の保護や起動状態の測定に使われます。BitLocker、Windows Helloなどのセキュリティ機能と連携します。UEFIが起動経路を管理し、Secure Bootが署名を確認し、TPMが鍵や測定値を支える、という役割分担です。

Windows 11の最小要件はUEFI、Secure Boot対応、TPM 2.0です。「Secure Boot対応」と実際の有効状態は区別されますが、安全性のため通常は有効化が推奨されます。

2026年のSecure Boot証明書更新

2011年発行のMicrosoft Secure Boot証明書は、2026年6月から順次有効期限を迎えます。Microsoftは2023年版証明書をWindows Update経由で展開しています。多くの家庭用PCは自動更新されますが、一部ではメーカーのファームウェア更新が必要です。

期限が来ても突然PCが起動不能になるわけではありません。Microsoftによると通常の起動や一般的なWindows Updateは続きますが、新しいブート保護、失効リスト、起動関連の修正を受けられなくなります。回避策としてSecure Bootを無効にせず、Windows UpdateとPCメーカーの案内を確認してください。

「BIOSを開く」は今も間違いではない?

技術的にはUEFIでも、メーカーの説明や会話では「BIOS設定」「BIOSアップデート」という名称が残っています。そのため「BIOSを開く」は通じます。Windowsでは「システム情報」のBIOSモード欄で「UEFI」か「レガシ」かを確認できます。

設定を安易に変更しないでください。Legacy/CSMからUEFIへ切り替えるだけでは、MBR構成のWindowsが起動できなくなる場合があります。重要データをバックアップし、BitLocker回復キーを確認してから、PCメーカーの手順やMicrosoftのMBR2GPT資料に従ってください。ファームウェア更新中の電源断も故障につながる可能性があります。

macOSではどう進化した?

初期Mac:ROM中心

初期MacintoshはIBM PC互換BIOSではなく、ROMにToolboxやQuickDrawなど多くの機能を持っていました。

PowerPC Mac:Open Firmware

IEEE 1275系のOpen Firmwareを採用し、デバイスツリーやコマンド環境を利用しました。

Intel Mac:EFI/UEFI系

2006年以降のIntel MacはEFIを採用。世代やOSによってWindows互換起動の構成も異なりました。T2搭載Intel MacではT2からUEFIファームウェアまで信頼を検証します。

Apple Silicon:Apple独自の起動系統

MシリーズMacはBoot ROMからLLB、iBoot、macOSへ進みます。Secure Enclaveが署名したLocalPolicyも使い、OSごとに起動セキュリティ方針を管理します。

項目現在のWindows PCIntel MacApple Silicon Mac
ファームウェア/起動基盤UEFIEFI/UEFI系Apple独自
安全な起動UEFI Secure Boot世代により異なる。T2搭載機はT2が信頼の起点Boot ROM→LLB→iBootの信頼の連鎖
鍵・セキュリティ機能TPM 2.0T2搭載機はSecure Enclaveを含むSecure Enclave
ハードウェア多数のメーカー構成Apple設計+Intel CPUApple SoC

Secure Enclaveを単純に「TPMより上」と順位付けするのは適切ではありません。規格も担当範囲も異なり、どちらも各プラットフォームの鍵保護や安全な起動を支える設計の一部です。

BIOSからUEFIへの年表

1981年:IBM PCとBIOS

PC互換機の基礎となる起動方式が広がる。

1990年代:フラッシュメモリ化

ファームウェア更新が一般化する。

2000年前後:Intel EFI

従来BIOSを置き換える新しいインターフェースが発展。

2005年:UEFI Forum設立

複数企業による標準仕様として管理。

2010年代:UEFI+GPTが普及

大容量ディスクとSecure Boot対応が一般化。

2021年:Windows 11

UEFI・Secure Boot対応・TPM 2.0が最小要件に。

2026年:証明書世代交代

2011年版から2023年版Secure Boot証明書への更新が進む。

まとめ:見た目以上の世代交代

BIOSからUEFIへの移行は、青い設定画面がカラフルになっただけではありません。起動ファイルの管理、大容量ディスク、拡張性、署名検証、TPMとの連携を含むPC基盤の世代交代です。

そしてMacは、Intel時代のEFIからApple Silicon独自の起動チェーンへ進みました。WindowsもMacも共通しているのは、OSが動く前から信頼できるコードだけを段階的に起動する方向へ進化していることです。

参考にした公式資料